正午の鐘の音に、魅麗は、目を覚ました。
鐘の音は、重厚に鳴り響いている。
魅麗は、ベッドに横たわったまま窓の外に目をやると、太陽は、真上に登っていた。
隣では、怜樹がすやすやと眠っている。一睡もしていない彼は、鐘の音など耳に入らぬ様。真っ白なシルクにくるまって、深い眠りの中だった。
魅麗は、音を立てないように、ゆっくりと静かに起き上がった。しかし、低血圧の彼女は、まだ頭がぼーっとしていたので、掛け布団を抱いたまま、暫くベッドの上に座っていた。ふと、なんだか肌寒いと思い、掛け布団を身に纏う。それでも寒いので、寝惚けたまま疑問に思う。魅麗は、徐に、自分の体を見て、
「あ!…」
何も身につけていなかった事を思い出した。
「そうだった…」
さっきの怜樹との出来事を思い出す。
途端に、恥ずかしさが込みあげてきたが、それと同時に、魅麗は、とても、清々しく思った。
新しい日の始まりの様な、新鮮な気分だった。
魅麗は、怜樹に何か食事を作ってあげようと思い、ベッドから立ちあがり服を着ると、部屋を出て、階段を降りた。
「キッチンは何処だろう」
昨日来たばかりで、何処がどの部屋なのか、わからない。
魅麗は、キッチンを探しながら、部屋の探索にわくわくしてきた。
「ここかなぁ」
色鮮やかなステンドグラスのドアが目に付き、開けてみる。
「わぁ~!」
そこは、キッチンではなさそうだったが、魅麗は、目を奪われて、部屋の中を見渡した。
部屋中の窓が、色鮮やかなステンドグラスになっていて、陽射しによって、床に、いろんな色を映している。
「綺麗~。これも、怜樹の手作りかしら。才能があるのね~」
魅麗は、ひとり呟きながら、感心した。
部屋の真ん中に、大きな円柱のものがあった。
「あれは何だろう」
魅麗は、近寄った。
それは、天井から下げられていて、色々見ているうちに、下から覗けるようになっている事に気付いた。
魅麗は、不思議に思いながら、下から覗いてみた。
「わぁっ……」
覗くと、描かれた色のひとつひとつが、円の中で規則正しく現れた。
「もしかして、万華鏡?」
黒い輪に気付き、そっと回してみる。輪は動き、同時に円の中の絵も動いた。
「凄い……」
魅麗は、驚かされるばかりだった。