「そうだったの」
魅麗は、目を細め、微笑んだ。
「あら?どうしたの!?」
怜樹の顔を見て、驚く。
「あ、あぁ……いや、なんでもないよ」
怜樹は、泣いた事を魅麗に知られたくなくて、顔を背けた。
「なんでもないって…そんなに目を腫らして」
魅麗は、心配して、ゆっくりと起き上がった。
「寝てないの?ずっと絵を描いていたのね。目、痛い?見せて」
魅麗は、とても心配になって、怜樹に言った。
「なんでもないから、気にしないで」
怜樹は、魅麗に見せまいと、魅麗から離れた。そして、
「いい天気だよ」
と言いながら、カーテンを開ける。
「ほら、魅麗の好きなお日様だ。眩しい!」
怜樹は、手を日よけにしながら、目を細めた。
「凄くいい天気だな。でかけようか!」
怜樹は、爽やかな笑顔で言った。そんな怜樹に、魅麗は、笑いもせずに言う。
「ちゃんと寝て」
「朝だし、眠れないよ」
「駄目よ。一睡もしてないんでしょ」
「たまにはいいね。清々しい気分だ」
「睡眠不足は体によくないんだから」
「大丈夫だよ」
「…………」
魅麗は、少し溜め息混じりにうつ向く。
魅麗の性格からして、なんとなく、変に責任を感じているふうにも見えた。
「心配しないで。今日の夜は、ちゃんと寝るから。朝はもったいない」
「………、わかったわ」
魅麗は、しょうがないなという顔で笑った。
「顔を洗うだろ?あ、シャワー浴びる?」
「いいの?」
「勿論」
「じゃあ、シャワーを」
「OK!」
怜樹は、浴室へ駆け降りると、すぐに駆け上がってきた。
「もう浴びたの!?」魅麗は、目を丸くして尋ねた。
「ううん。準備をしてきただけだよ。お湯もはってるから、お好きな様に、どうぞ」
「え、先にいいの?」
「どうぞ」
怜樹は、微笑みながら、手を添え促した。
「じゃあ…、お言葉に甘えて」
「うん。階段を降りて突き当たりだよ」
「はい。有難う」
魅麗は、階段を降りていった。
怜樹は、部屋にひとりになると、溜め息をついた。溜め息なんて、あまりつく事はなかったのに…。
うんざりした溜め息ではなく、何て言ったらいいのだろう…寂しいというか、虚しいというか、大泣きした自分が意外だったというか、魅麗が日本に帰ったら、ぽっかりと穴が空いた様になりそうな自分を感じたりして……