魅麗は、一日の仕事を無事に終えて、怜(ユウ)と一緒に夕食をしながら、テレビを見ていた。

夕方のニュース番組で、怜樹の個展が、大盛況だったことを知る。

【良かった、ね】

魅麗は、怜樹から届いた綺麗な招待状を見ながら、心の中で呟いた。

怜(ユウ)は、怜樹のことを知らないので、普段と変わらぬ様子で、ただ、テレビを見ていた。

絵が映った時だけは、興味があるのか、夢中に見ていた。


「あ!忘れてた!」

魅麗は、慌てて立ち上がる。

洗濯物を干したままで、まだ、取り入れていなかった。

「夜になったら、夜露にぬれちゃうからねぇ」

そういいながら、裏庭に出ると、魅麗は、落とさないように、洗濯物を取り込んだ。


裏庭から見える山道を、勢いよく下ってきた車に、怜(ユウ)は、何気無く気がついて、見ていた。

車は停車して、男の人が降りてくる。

怜(ユウ)は、じっと見ていた。

お店に来るには、階段を上がらないと辿り着かない。

車が停まった場所からは来ることはできないので、車から降りた男の人は、その場から、魅麗のお店の方を眺めていた。

見晴らしが良いので、離れた所からでも見える。

ふと、自分の方をじっと見ている小さな男の子に気づく。

【ユウ……】

我が子を、愛しく、心の中で呼んだ。

怜(ユウ)は、何故か、男の人に、満面な笑顔を向けた。
そして、手を振った。

その姿に、驚く。

と同時に、特別なものを見たような、感激に襲われた。

男の人は、魅麗に気づかれてはいけないだろうと、魅麗の気持ちを察し、車に乗った。

そして、発進させると、その場を後にして、走り去っていった。


「ユウ?」

洗濯物を取り込んだ魅麗が、怜(ユウ)の様子に気づき、声をかけた。

「誰に手を振ってるの?」