その頃、怜樹は、個展の準備に取りかかろうとしていた。

怜樹の絵画のファンは、かなり多く、スタッフは自然と集まり、期待は大きかった。


怜樹は、自分の個展を、今までにないものにしたいと考えていた。

そう思った途端から、日々、何気無く過ごしている時間でも、アイデアは閃いて、怜樹は、その都度、提案を言っていた。

スタッフたちは、大いに共感した。

絵のことは勿論、それだけではない、怜樹の才能を周りの者達は、非常に買っていた。


そして、怜樹の念願の、第一回目の個展が開催された。


怜樹は、魅麗と怜(ユウ)に案内状ならぬ、招待状を出していた。

そして、怜樹は、来てくれることを信じて、来展者たちを接待し、挨拶しながら、密かに心待ちにしていた。

一時間が過ぎ、二時間が過ぎ……

怜樹は、仕事をしながらも、心でずっと待っていた。

時間は過ぎ、どんどん過ぎゆき……

とうとう、魅麗と怜(ユウ)は、現れなかった。

【そう、だよな…】

怜樹は、苦笑いし、現状を受けとめる。

お陰さまでというのか、怜樹は、沢山の来展者たちを出迎えて目を配り、接待し挨拶をし、落ち込んでいる暇はなかった。