声の方に目をやる。


「あ!」

綾は、声をあげた。

修も目を丸くする。


美咲 怜樹が現れたのであった。


テレビで見ていた人が、目の前に現れたので、綾と修は、驚きを隠せなかった。

緊張して言葉を出せず、二人は、ただただ目を丸くして、つっ立っていた。


「夜光っていうもので、絵の具が光っているんです。まっ、簡単に言いましたけど」

そう言って、怜樹は、微笑んだ。

「ゆっくり見ていって下さい。まぁ夜になりましたから、危ないですから、あまり遅くない程度に」

怜樹は、優しく微笑んだ。
そして、建物の中へと、入っていった。

綾と修は、怜樹に会釈をした。



「びっくりしたね」

修は、びっくりしすぎて声も出ないといった様子の綾に、そっと、声を潜めて声をかける。

「うん…」

綾は、美咲 怜樹に会ったという現実が、信じられず、実感できずにいた。
茫然としていた。


「画家美咲 怜樹に会っちゃったな」

「うん」

「あ、でも、綾は、あのお姉さんから、聞いていたんだよね」

「うん…でも、やっぱり、有名な画家としてテレビで見てたから、びっくりしたぁ…」

「そうだな。まさか、いたとはな」

「うん…」

「会っちゃったな」

「うん。明日、魅麗さんに話そう」

「そうだな」

「私、夢に見そう…」

綾は、そう言って、暗がりに浮かび光っている絵画を見上げる。

「そうだな…綺麗だな…」


二人は、幻想でも見ているかの様だった。