「どうぞ」
怜樹は家に着くと、玄関の扉を開け、お姫様を招き入れる様に、丁寧に魅麗に言った。
「はい。お邪魔します」
怜樹の家は、真っ白が基調の、お洒落な家。魅麗が玄関を入ると、怜樹は、絵画室として使っている部屋へと案内した。
「さぁ、入って」
魅麗は部屋へ入ると、部屋中に置かれた沢山の絵画に目奪われた。
「凄い……。これ全部、怜樹が描いたの?」
「勿論」
「凄い………」
何枚、いや、何百枚もの絵が置いてあった。海の絵、空の絵、景色の絵、植物の絵、街や花………。絵は一パターンだけじゃなく、海の絵ひとつとっても、様々だった。太陽が燦々輝くと眩しい海。ぼんやりと月明かりの浮かぶ海。沢山の小魚と雄大な船の絵。水色の海。真っ青な海。エメラルドグリーンの海。穏やかな海、静かな海、嵐の海、哀しい海。空の絵もそう。夏の太陽と入道雲。水色の大空に飛行機雲。満月と竹やぶ。元旦の虹。青い空、オレンジ色の空、赤紫の空、夜空。その中で、一際多く描いてあったのは、宇宙の絵だった。
「絵がいっぱいね。特に、宇宙の絵がいっぱい」
「うん。宇宙が好きなんだ。今、こうしている瞬間も、宇宙は膨張しているんだって。それだけじゃない。今も、星屑から惑星が生まれたり、今この瞬間も、新たな星が誕生したかもしれない。宇宙は動いていて……。そう考えると、宇宙の果てって、何処だろう。ずっと行くと、何処まで続くのだろう。もし、宇宙は此処までですって仕切りがあったとしたら、その仕切りの先は?」
怜樹に急に質問をふられて、魅麗は、戸惑う。
「えっ、…さぁ…?わからない…」
「うん。わからないよね。神秘的だよね」
「うん」
二人は、見つめ合い、神秘な宇宙を想像していた。