だいクンがゆっくりと口を開く。



「兄さんは……何がしたいんだろうね…」



だいクンが言う『兄さん』とは、僕と玖音の父さん。



「何が目的で…こんな事を‥」

「‥だいクン」

「…或がね?顔色一つ変えずに‥コレを差し出したんだ」



だいクンの手には、或の退学届けがあった。


だいクンは泣き出してしまうんじゃないかと思うくらい……

強く、強く…退学届けを握りしめた。



「‥だいクン。僕も…」

「……或から…聞いたよ。全部」

「そっか…」

「或が言ったんだ。『悲しいのは、俺達じゃない。悲しいのは浬音だ』」



だいクンは或の退学届けを見つめながら、続ける。



「『アンタが泣いたら、浬音はもっと悲しむ。アンタが止めたら…浬音の勇気が、無駄になる』って‥」

「…うん」

「だから…止めないよ。浬音が、最後は…決めたんだろ‥?」



だいクンは揺れる瞳で僕を見つめる。