「それに塩川はハッキリ言った。お前に、愛してると伝えたい、とな」
コトンと、手に持っていたペンを置く。
「ただ俺は、認めたくなかったんだ。教師と生徒の恋愛を。認めてしまったら、過去の自分の弱さを認めてしまう気がして……」
教師と生徒だからって理由で自分の気持ちから逃げた自分の弱さを、実感するのが怖かった。
結局今も昔も、俺は弱いままだ。
「塩川も、凪原も強い。自分のコトより相手のコトを考えて、思いやれる気持ちがある。その気持ちを否定する権利は俺にはない。だから俺はお前と塩川との仲は反対しない」
「……なあ、義実」
「何だ?」
「義実も、弱くなんかないと思うな、俺」
「いや、俺は……」
「あの美人な先生が義実に迷惑だ、って言った理由……本当は、知ってるだろお前?」
ニコリと倉本が笑顔を浮かべる。