「───無くした?お前にしては珍しいな」

「すいません」


冷房の効いた職員室の片隅に座って、他の生徒達の進路希望調査表をパラパラと数える担任に、心は小さく頭を下げた。

成績優秀、とまではいかないが頭はそこそこいい方だし、授業態度だって真面目な私は可もなく不可もなくって感じだと思う。プリントや課題は期日内に提出するし、忘れ物だってめったにしない。

どこで無くしたのだろう。

教室も家も探し回ったけど見つからなくて、仕方無く担任の熊谷にもう一枚を貰いにきたのに



「………あの」

「んー?」

「プリント、欲しいんですけど」

「あー………どこだっけなー……あったあった」



ポリポリと少し薄くなった頭を掻く担任が右手で机の上に積まれたプリントを漁る。整理整頓しろって言いたくなるくらい、汚い。その山からよく見つかるなあ、と眺めていたら案外早くみつかって。



「ほれ、今書け」

「はい」



プリントを受け取って机の空いたスペースに置いたら熊谷がボールペンを貸してくれた。


進路希望調査表


その文字を少しだけ見つめて、下のスペースに名前を書いた