………そういえば、
さっきの高校生も雷が苦手だった。
びしょ濡れだった胸の辺りまである真っ直ぐで真っ黒な髪の下の、あまり感情が表れない大人びた顔立ちが凄く印象強く残っている。
俺を見て驚いたくせに叫び声ひとつ上げないで淡々と身体を拭いていたけど、雷が鳴る度に小さく震えていた。
本当は怖いくせに、俺がいるからか知らないけど強がってたみたいだから、隣においでって言ったら意外と素直に俺の隣に座ったから、俺も少しだけ安心した。
おかげで雷をやり過ごす事ができたから助かった。
一人だったら気分が悪くなってただろうから。
それに、誰かと会話したのも久し振りで。あれを会話って言っていいのか分からないけど、でも何だか少し心が暖かくなって、軽くなった。
「……って、あれ?」
……久し振り?
久し振りも何も、俺はここに来てから会話なんてしたことが無いのに。なんで、久し振りだなんて思ったんだろうか。