「───……あーあ、」



行ってしまった。


ピシャリと音を立てて閉められたら引き戸を眺めながら俺は溜め息をついた。



………俺はいつの間にか此処にいた。


だから、同じようにいつの間にか時が流れて、いつの間にか消えていくんだろうと思いながら、ぼんやりとあの引き戸から漏れる外の色を眺めながら過ごしていた。

初めて此処に来た人間の男に声を掛けて反応が無かった時、「ああ、俺は人間じゃないんだ」という事に初めて気付いた。

翌々考えてみれば、なんとなく身体は透けてるし、物には触れられないし、実は今だって座っているように見せかけて少し浮いてたり。

人間じゃないのは確実だった。

けど、そうしたら疑問が湧いた



じゃあ俺は何なんだろう



考えようにも、その度に真っ白になる頭の中に邪魔をされて何も考えられなくなる。それを繰り返しているうちに自分の存在がどーのーこーのという事を気にしなくなった。


唯一、俺が自分に関して分かることと
   
自分が人間じゃないってことと



「……おー、夕焼けー……」



先程までの重苦しい雲はどこかにいって、すっかり明るさを取り戻した空から漏れる光は茜色に変化していた。引き戸から漏れる僅かながらも暖かい光に、そっと目を閉じた。


それと、何故か、

雷が苦手ってこと。