「残念だけど、若林さんとはお付き合いできない。」


仮面をつけて、
丁寧にお断りする慧斗。


「……ん、」

「ぇ?」

「佐野さん??」


不意に出てきた私の名前に、ビクッとした。


「……。」


何も答えない慧斗。


「やっぱり。
慧斗くんは、佐野さんと付き合ってるの??」


心拍数が、ゆっくりと速まっていく。

いつも慧斗とキスするときとは違う、もっと嫌なドキドキ。


聞きたくない。

ここから離れよう。

そう思って、屋上から出ようとふたりに背を向けたとき、


「……付き合ってないよ。」