「番号教えて。」 頭で考えるより前に、 口にする事にした。 どうせばれるから。 「あ、うん。」 彼はしまいかけた携帯を差し出した。 渡された画面に表示されている番号に電話をかける。 「はい、私の番号。」 彼はキョトンとした後、 「明日の夕方、かける。」 と言って、 嬉しそうに魂の緊張を緩めた。 このくらいの事でこの人の機嫌が直る事を、 いったい何人の人が知っているだろう。