タクシーは濡れた東京を進んでいく。


色とりどりの

傘と、

車と、

けだるい魂が

窓の外を次々と流れていく。



暗く沈んだ無機質な街並みの間に

ちらりと病院の建物が見えて、

私は安堵の息を漏らした。




こんなに離れているのに、

こんなに強烈に迫ってくる魂を


私は他に知らない。



そして、

その強すぎる魂を持った、
類い稀な人物を失わなくて済んだ事実に、


信じてもいない神に感謝してみたりした。