―ガラッ

突然の扉の開く音に私は身を固まらせた。
誰か来る…

私はまた考えた。

入ってくるのは誰だろう?
母か?父か?
はたまた兄弟姉妹か?

何故かは分からないが、病院にいるのに“看護師”が来たのではないか、ということは考えなかった。

「!!っ、目が覚めたんだね」

出てきたのは父にしては若すぎる男…
弟…いや兄か?

「いや、本当によかった…
死んじゃったらどうしようかと思って…」

目の前でとてつもなく縁起でもないことを言うこの男。

「?柚李?」

ゆい?
私の名前?

私は男に尋ねようとした…けど
あれ、?
もしかして…

声 が 出 な い ?

な、本当に何があったんだ!!

私は半分パニックになりながらもどうにか男とコミュニケーションを取ろうとするが、痛みで体は動かず、話せないためどうしようもない。

馬鹿な私は心の中で男に悪態をつきながら話しかけた。

(私、何も憶えてないんだけど。
それくらい察して欲しいんだけどね?
体は痛みで動かないし。
此処は病院、それは雰囲気で分かった…
でも家族、人間関係、今まで何があったか…
私は何も知らない。)

我ながら本当に自分は馬鹿だと思う。

「!!…、まぁなんとなくそうかもしれないとは、思っていたけど…
やっぱり俺も憶えてない?」

何か悲しそうに問う目の前の男。
……え?
何を言っているんだこの男?
ちょっと待て、私は何も話していない。
心の中で思っただけだ。
決して口には出していない。
身振り手振りで伝えることも出来ないんだ。

「……柚李」

何か考える素振りをしながら私の名前?を呼ぶ目の前の男。

「お前は俺の元恋人だ」

…………………は?
急に…真顔で何を言いだすこの男。
恋人なら分からないでもないが、元?