背を向けて歩き出したアタシに、尚人が背中越しに問う。



「お前だけが傷ついてるわけじゃねぇだろ?」


「・・・・。」

わかってる。




「お前が傷ついてるぶん、アイツもすげぇ後悔してる。充分傷ついてんよ。」


「・・・・・。」

あぁ、何だ。


尚人は知ってるんだ。


あの日の事。


じゃあ何か勘違いしてるのかも。





アタシはゆっくり振り返った。


アタシが大和を憎んでいたのはね。





「逝かせてくれなかった大和が憎かっただけ」


アタシ、どんな顔してそう言ったんだろ。



尚人は酷い顔してアタシを見てた。


驚いた様な、悲しい様な、哀れむ様な・・・・何か言いたそうな顔で。




ふいに由美の言葉が頭に過る。


自分から人に触れようとしない。


自分が一番可愛いんだ!


そうだね。

その通り。


じゃあさ?

どうしたらよかった?


いつも先に傷つけられて


暴力を振るわれるのはアタシで。


そのせいで誰かが傷つくんなら


アタシは消えるしかないじゃんね。