「由美って子パクラレタんだろ」


「・・・・・。」


駆け寄ってきた尚人は、来て早々にそんな事を言った。


何て答えたらいいのか。

何で知ってるのか。


考え込むアタシに、尚人が苦笑いした。


「いいよ、大体予想つくから。白井って奴の関係だろ?どうせ。」


「・・・・・・。」

思わず目を丸くする。

何か知ってるんだ・・・



「大和もまぁ、そいつのせいで捕まったし。」


大和?

大和って・・・・


正直少し、引っかかった。


白井の事なら聞いておきたい。


でも・・・


「もう、いいよ。」


「え?」

キョトンとして聞き返す尚人に、アタシはハッキリとした口調で言った。


「もういい。大和の名前聞きたくない。」


「・・・・・。」


もう、うんざりだ。

その名前を聞くたびに、愛しい気持と憎しみが交差して心がグチャグチャになる。



グチャグチャだけならいいのに。
憎しみだけならいいのに。


一度好きになった人間は、それでも

僅かな愛情の影がそれを邪魔する。