「もうっ!!」
一方的に電話を切られたその男は、頬を膨らませて携帯を睨みつけていた。
バックルームを抜けて
「マスターお疲れ様~」
オーナーに声をかけると小さな喫茶店を後にする
仕方ない・・・
ため息をつきまた携帯を開く。
PRRRR・・・
ワンコールですぐ、相変わらず元気な少し高い声が聞こえた。
「もしもーし!はいはい。電話したよ~っ。」
男は歩きながら、電話の相手に苦笑いを浮かべる
「年末には帰ってくるってさぁ~もう!俺親父の手伝いで忙しいんだからさ!自分で電話してよっ!暇人っ!」
プチッ
言うだけ言って電話を切ると、立ち止まり、派手派手しい看板を見上げる
中から出て来た従業員が、自分よりずっと若い、その男に頭を下げた。
「お疲れ様です!!」
「お疲れ様~っ」
男は屈託もなく笑う。
子供みたいな顔したこの男は、いつかきっと、誰よりも高みに昇る事だろう。