「どうしたら満たされるのかわからない。100%じゃなきゃ、手にした気持ちにならないんだ。」
「・・・・え?」
首を傾げたアタシに、那智は苦笑いを浮かべる
「もしも、少しでもあの時。梅林に愛美を迎えに行くのが遅かったら?」
「・・・・・・」
真剣な顔でアタシを見る那智に、アタシは言葉の意味を探した。
「白井の事好きになってた?」
「・・・そんな事・・」
言いかけたアタシの言葉を遮る。
「いろいろあった相手に、そう簡単に愛美が心を許すとは思えない。何とも思ってない奴を、あんなに必死になって・・・守ろうとはしない。」
「・・・・・」
的をえてる台詞に、何も言えなくなる。
「白井が死んだ日、お前を引き止めた事後悔してる・・・」
「・・・・・・」
あの日、確かにアタシを力強く引き止めた。
その手を、振りほどいてしまったけど・・・
「でも、俺は最低だから、お前が白井の死に目に間に合わなかった事より・・」
「・・・・事より?」
目を細めて見上げたアタシに、那智は苦しそうな表情を見せる。
「もしも・・白井の死に際、お前がそこに居合わせたら?」
「・・・・・」
「余計にお前の中に、白井が強く残るだろ?」
「・・・・・」
そうかもしれない。
アタシは視線を外して、目を伏せた。
「白井が死んだ事で・・・お前の中にアイツが生き続ける事が苦しくてしょうがない・・・」
「・・・・・・」
その言葉で、アタシの胸まで苦しくなる。
「いつも隣にはお前が居て、その気になれば触れられるのに・・お前と居ると もしも ばかり考える・・・」
「・・・・・」
珍しく喋り続ける那智に、アタシは相槌も打てずに俯くだけ。
「俺、ガキなんだよまだ・・・・お前の中、俺だけにしたい。死んだ人間に嫉妬するなんて最低だ・・・・・」
ベンチに座ったまま、那智は頭を抱えて溜息をついた。