「ありがとね・・・」

那智が助け舟を出してくれてなかったら、きっと無口なアタシに

母も再婚相手(その人)も嫌な思いをしただろう



マンションを出た所でそう言ったアタシに、那智は素知らぬ顔で笑ってみせた。


「何の事??」

「・・・・・」

アタシはフツと笑って、バイクの後ろにまたがる。


那智は優しい。

その優しさはアタシにだけだって事、知ってる。

人見知りだし、倉木意外には馴れ合わない人だし


でもじゃあ・・・


何で指輪を外したの?



アタシにはもう

つける資格ないのかな?




行く宛てもなくバイクは走り出す。


鎌倉街道を真っ直ぐ、走り続ける那智に

騒音に負けない様声を張り上げた。


「どこ行くの!!」


「桜木町!!」


「・・・・・・」
桜木町・・?!


思ってもみなかった答えに目を丸くする。


「何しに行くの!!!」


ちょうど信号待ち

バイクをとめて那智が振り返った。


「デート」

「・・・・・」

一瞬で耳まで赤くなったアタシを見て、那智は満足そうに笑った。