それから10分もせずに、バイクの音が聞こえてきた。


アタシはスエット上下の上に、もう一枚パーカーを羽織って、それでも少し震えながらマンションの外に出た。



寒いのは寒いんだけどさ。



震えてるのは多分違う理由。




「愛美!」


「高貴?!」


迎えに来たのは那智じゃなく高貴だった。



バイクにまたがったまま、早くしろと急かす様にシートを指差す。


アタシはそれに従って、高貴の後部シートにまたがった。



「那智は?」


バイクが風をきって走り出す。


騒音に負けない位大きな声で、高貴の耳元で尋ねた。




「・・・・・・。」


聞こえないのか、何も答えない。



銀髪の先、まだ少し湿っていた。


多分お風呂上りか何かで、急いでそのまま出て来たんだろう。