それからの記憶が、

あまりない。


人間きっと

どうしようもなく辛い事は、忘れる様に出来ているのだろうか・・・



ただ、一回り小さくなった様に思えた白井を


直視出来なかった事は覚えてる。


無機質な壁やベット。

薬品の匂い。


目をきつく閉じて、息をとめても


涙は出なくて・・・・

ただ視点のあわない虚ろな瞳で、立ち尽くしてた

どうしても信じられなかった。


アタシの隣で、梅沢が泣いてる。


いつの間に来たのか・・


泣き崩れるリアを、山崎が支えている。


どうして泣けるのか



だってまだ生きてる


アタシの中で

憎たらしい、生意気な

子供みたいに笑う白井は


まだ生きてるのに・・・






白井のそばに
寄り添う様に枯れた、真っ赤な薔薇を見つけた。


白井がアタシにくれた

小さな赤い薔薇


アタシはそれを見つめて


ようやく涙が一筋


零れ落ちた。