アタシを呼んだのは尚人だった。
「何?」
廊下の壁にもたれて、尚人を見上げる。
「あの子の事知ってんのか?」
「・・・・?」
「由美って女。」
「あぁ。」
そう答えたアタシに、目を細めて尚人が言い放つ。
「大和がどうしてパクラレタか知ってるか?!」
「・・・知らない。」
どうでもいい。
退屈そうに目をそらしたアタシの肩を、振り向かせる様に両手でグッと揺さぶる。
「・・・・・。」
睨みつける様に尚人を見上げたアタシに、
「・・・・・っ!」
掴んだ手を離すと、尚人は酷く悲しげな顔をして見せた。
「もう・・いい!」
吐き捨てる様にそう言い放ち、背を向け歩いていく尚人を、ただ壁にもたれながら虚ろな目で眺めた。