「・・・・・・」

「・・・・・・」

スーパーの惣菜をテーブルに並べて、二人向き合ってただ箸を動かす。


沈黙を破ったのはアタシの方だった。

「明日からバイト始めるから。」

「・・・そうなの!」

何故か母は驚いた様に顔を上げた。

「駅前の喫茶店。」

「そう・・頑張ってね」

「・・・・うん。」


相変わらずぎこちない。

当たり前か。

そう簡単に普通の親子みたくはなれない。




「あのね・・・お母さん、男の人と付き合うのやめるわ・・・」

何を思ったのか、急に苦笑いをしながら母がそう言った。


「・・・・・」



「昨日、愛美に頑張ってって言われてね・・・お母さん本当に嬉しかったの・・・・それだけで本当に・・・頑張れたの」


「・・・・」

今にも泣きそうな顔で、それでも母は、箸を動かしながら喋り続ける。


「ずっとアンタの為に生きて来たつもりが・・・結局、守ってあげられてなくて、ごめんね・・」


「・・・・・・」

ついには、母の涙がポロポロと、テーブルに落ちる。


「アンタの方が寂しいのに、お母さん弱虫だから・・・寂しくて、ずっと逃げてた・・」


「・・・・・」


母が頭を下げて、テーブルの上で拳をギユッと握りしめた。

昔より皺が増えたその手をじっと見つめて、アタシは言葉を探した。

でも見つからない。

今まで素直じゃなかった代償だ。

口が足りない。