「小さな頃からね?ソリストになるのが夢だったんだよ。高貴。」
「・・・・ソリスト?」
首を傾げたアタシに、那智が苦笑いする。
「独奏者。バイオリンの。」
「・・・うん」
何となくはわかる。
気がする・・・
「小さな頃からいつも、楽しそうに弾いてた。アイツ4歳から始めたんだ。バイオリン。」
「凄いね・・」
そんな小さな時から。
「うん。」
そう言って微笑む那智を見て、アタシまで少し笑みをこぼす。
小さな頃からきっと、二人は仲良しだったんだな
「でも中学の時、大切なコンクール前に。アイツは俺のせいで出場出来なくなった。」
「・・・・・」
前に言ってた・・・
那智の喧嘩に高貴が助けに入ったって・・・
那智は唇を噛み締める。
「それから高貴は弾いてくれない・・・アイツの夢を奪った俺は・・・」
「・・・・・」
「俺はお前を諦めようと思った。」
「・・・・・・」
アタシを真っ直ぐに見る目。
揺れる瞳の奥。
ドクンッ
脈打つ鼓動
見透かす様に呟いた。
「でもやめた。」
「・・・・・」
「いい加減諦めたよ。俺はお前が好きなんだ」
綺麗な顔で悲しそうに微笑む。
アタシはうっかり見とれていて、酷くなった胸の痛みにも、気付かずにいた。