それから30分ちょっと


「ごめんね?急にっ」

竜が上目使いでアタシを見上げる。


「ううん。」

リビングに通して紅茶を入れると、角砂糖を多めに添えた。


ソファーに座った竜の前にそれを置いて、アタシもその前に座る。


「あのさー俺ん家何やってるか知ってる?」

突然話し出した竜の声に耳を傾ける。


「ううん。」

そういや聞いた事ない。


「パチ屋とラブホ~」

「・・・そうなのっ!」

無駄に驚いてしまう。

「そうなの。言ったら成金~。」

ニコッと笑った竜に、アタシは頷けずにただ次の言葉を待った。


「でも高貴ん家は違う。あそこは本物だからさ、高貴は大変なんだ。次男だけど一応ね、体裁とかさ?」


どこかしょんぼりとした顔をする竜。


「そうなんだ・・・」

そんな風には見えないけど完全なお坊ちゃまなんだな


「高貴がバイオリンやってたの知ってる?」

「うん。那智に聞いた」

「・・・・・」

サラっと答えたアタシに、竜が大きな目を丸くした。


「そう・・那智何て言ってた?」

「・・・・・」

俺のせい・・・
あいつがバイオリンやめたの・・・・


そう言った那智の顔を思い出した。


黙ってしまったアタシの代わりに竜が呟く。

「自分のせい・・・って言ってた?」

「・・・・うん」


「そう。だろうね、そう思うよね・・・」


竜は溜息をついてからバッと顔を上げて叫んだ。

「高貴は意気地無し!那智はお人よしっ!」


「・・・・・・」

キョトンとした顔をするアタシに、竜は屈託もなく可愛い笑顔を向ける。


「昨日の今日だしさ、どーしようかと思ったけど、やっぱ早い方がいいよね・・・・」


独り言の様に呟くと、ソファーに胡座をかいてアタシをじっと見た。


「知りたい?那智と高貴、あの二人の過去。」