「やっぱ中卒は仕事少ねーなー。今更後悔。」
職安を出た所で、珍しく真面目な言葉が白井の口からこぼれた。
「・・・そんなもん?」
適当に相槌を打ったアタシを呆れた顔で見る。
「はぁ~・・・あのねー今は学歴社会なのー」
「・・・・・」
そんな言葉が白井から聞けるとは思わなかった。
「選択肢が狭まるからなー、高校行きながらやりてー事見つけて、ふつーに青春おくってる奴らが羨ましーよー」
「行けば良かったじゃん」
簡単にそう言ったアタシに、白井がまた溜息をつく。
「あんねー?じーちゃんを頼ってまで、学校なんか行きたかなかったのー。」
「・・・・・」
「まぁー別にー、中卒でもすげー奴はいっぱい居るしー?やりたい事があれば何だって出来るけどなぁー」
「・・・・・」
急に自分が、恥ずかしく思えるのは何でだろう。
アタシは当たり前の様に、母に選択肢を与えられていた・・・
「ま、俺もやりてー事なんかねーけど?」
「・・・・・」
そう言ってアタシを見ると、軽く笑った。
俺も・・・って・・・
「ほらー。早く帰るよー?」
バイクのエンジンをかけた白井の後ろ姿を眺めて
少し、
少しだけ母を思い出した