「何なの・・・」
そびえ立つ建物を眺めて、アタシはボソッと呟いた。
「しょくあーん。」
そう答えるとくわえてた煙草を足で踏み消した。
連れて来られたのは駅裏の職業安定所。
わけもわからず白井の後をついて行くと、中は思ってた以上に人で溢れていた。
平日の午前中にも関わらず、アタシ達と同年代の若者から、サラリーマン風の紳士、中年のおばさんまで居る。
パソコンの前に座って、カチカチとマウスを動かす白井を、背後に立ってぼーっと眺めてた。
そういや前に一度、母に連れられて来た事がある気がする。
ふと視線を向けた先、真剣な眼差しで白井と同様、マウスを動かしている中年のおばさんが居た。
あの人も何か、守らなきゃいけないモノがあるのかな・・・・
「だぁぁーっ、疲れたぁーっ」
椅子からグーッと伸びをして、後ろに居るアタシを見上げた。
「山崎大工だろ?紹介してもらえばいーじゃん仕事。」
そう言ったアタシに、白井はニヤッと笑った。
「・・・・俺、か弱いから力仕事むかないのー」
「・・・・」
嘘ばっかり。