「で?何でアタシが飯作んだよ・・・」

玄関先。

白井に渡された一万円札を握りしめて、何故かウキウキしている梅沢を見上げた。


「・・・・・・」


ノーコメントの梅沢のかわりに、山崎が無愛想に答える。


「そりゃいきなりぶん殴ったらなぁ?」

「・・・・・」

確かに平手打ちをかました記憶はある。

でもそんな理由は理不尽だと思う・・・


「だって俺の事大事にしてくれんでしょー?」

一階の部屋の奥、どこから聞いてたのか白井が顔を出した。


「・・・・・・」
そんな事言った覚えは全くない。


無言で睨みつけたアタシに、白井が小さく笑いながら言った。


「売人のまね事もやめるし、意味なくぶん殴るのもやめるー簡単でしょー?飯作ったらそれでいいんだからさぁー」


「・・・信じられない」

いい加減、嫌気がさす。

怪訝な顔をしたアタシに、白井が馬鹿にした様に笑った。

「あーっ!わかった!料理出来ないんでしょー」

「・・・・・」

アタシは玄関横にあるキッチンをチラッと見て、

「・・・・」

そっと白井に手の平を差し出す。


「足んねーよ。」

「・・・・・・」


瞬きを繰り返して、白井が財布からもう一枚、一万円札をアタシの手の平に置いた。


「山崎。行くぞ。」

アタシの掛け声に山崎が振り返る。


「え?俺?」