「・・・・。」

スクッ


いきなり立ち上がったアタシに、白井が一瞬怯んだ瞬間


ガッ!


手元にあったビニール袋を奪い取る。

中には注射器とシャブの結晶。


「あーっ!」


白井が立ち上がり、小さく叫び声を上げた時には手遅れ。


窓の外に全てを投げ捨てた。

「あ~ぁーどぉーすんだよー!!」

「知らねぇよ。」

自信満々に白井を見下ろしてそう言った。


「アンタねぇー・・何なんだよーぉー・・・」

珍しく白井はベットの上にしゃがみこんだまま、頭を抱えた。


「お前は誰の事も大切じゃないのか?普通大切な人には薬物売り付けたりしないだろ。」

「・・・・・・」

アタシの言葉に、目だけこちらに向ける。


「よくないもんだって、わかってんだろ?」

「わかってるよー。わかってるけどさぁー?」

「・・・・・」

白井は大きく溜息をつく

「大切にされた事なんかねーのに、誰かを大切になんて思えるもんなんかよ?」


「・・・・・・」

「金になればいーんだよ。食ってけりゃー。」



そんなんきっと言い訳だ。

「もっと自分を大事にしなさいよ・・・」

「・・・・・」

ボソッと口を出たその言葉に、白井が目を丸くする。

自分で言ったアタシですら、その言葉に驚いていた。


「へー?お母さんみたいな事言うね?じゃーさ、アンタが俺を大事にしてくれるわけ?」

ニヤッと笑った白井を見て、アタシは躊躇う。


悲しみと怒り。
その感情がアタシの心ん中を、掻き乱す。

「・・・・・」

何となく・・・

わかった。

何でこんな気持ちになるのか・・・・