「指輪、どこにあったのー?」

アタシは振り返って、少し迷ってからそう答えた。

「部屋に落ちてた」

「うそつきぃー」

半笑いで白井が体を起こす。

「・・・帰るぞ。」

付き合ってらんない。


ガチャ


ドアノブを回すと同時に、ふいに白井が話し始めた



「俺んち片親でさー、俺昔からこんなだったしー、気付いたら母親が鬱になってて・・・・あ、鬱わかる?」


「・・・・・」

アタシは白井を振り返った。

突然話し出す白井に、少し戸惑いながら。


よく見たら傷だらけの顔、煙草をくわえてアタシを見る。

「ああ、わかる。」

そう答えたアタシに、白井は細く笑って、目を伏せた。


「自殺したんだよねー、母親。俺が16ん時。じーちゃんが見つけたんだ。」

煙草の煙りが、頼りなく揺れる。


「・・・・・・」

自殺。

その言葉に、思わず自分の手首をギュッと掴んだ


「三崎の港で。漁船のわきに浮いてるのをじーちゃんが見つけた。」


「・・・・・・」

唇を噛み締めた。

目の前にいるのは、最大の敵。

アタシが望んでた白井の弱み。

でも・・・・