「あれ?帰るの?」

一階の廊下で梅沢に声をかけられる。


「・・・・・」


無視して玄関を開けると、外にも何人かが溜まっている。

その中の一人、さっきの男だ。

鼻にティッシュを詰めたまま、アタシを睨みつけた。


「・・・・・」

まじで白井に殴られたんだ・・・・


少し歩いて、たどり着いたのはゴミ捨て場。


「はぁぁぁー・・・」

いったん通り過ぎて、また戻る。


観念した様に、しゃがみ込み大量のゴミ袋を一つ一つ開封していった。


さっきアタシが捨てたはずのゴミを、また逆さまにして広げては戻す。


馬鹿だ。

救い様がない馬鹿かもしれない


世界で1番憎らしい男の為に、アタシは何をしてるんだろうか。


もう諦めよう

あんな奴がどーなったって知ったこっちゃない

何度もそんな思いが頭に過ぎる。


でも・・・

人として、そのままにはしておけなかった。


形見だもん。


あの白井が泣く程大切な人だった人の形見だもん


それを無くしたかもしれないのはアタシだし。

妙な罪悪感を感じる。

アタシだって・・・・
多分大切な誰かが死んでしまったら・・・


言い訳みたいに何度も頭で繰り返し、手を動かした。


「な、何してんの・・」


ふと顔を上げると、梅沢と山崎を筆頭に、何人もの梅林の連中が怪訝な顔でアタシを見下ろしていた。