「さー疲れたから部屋でやーすもうっ」
呆然としているアタシの腕を掴むと、白井は凄い力で引っ張って行く。
「気安く触るな!」
階段の途中、ようやくその手を振り払った。
「チッ、つまんねーの」
「・・・・・」
睨みつけたアタシに、そう言ってスタスタと先を行く白井。
その時
白井の右手の拳に、チラッと鮮やかな赤が見えた。
「ちょっと!」
部屋の入口で腕を掴む。
「・・・・?」
不思議そうに振り返った白井を見上げる。
こうして立ち上がって目の当たりにするとやっぱりデカイ。
でも怯むわけにいかない。
拳に視線を落としてから、白井を睨みつけた。
「何した?」
そう言ったアタシに、白井は冷めた様に右の口角だけ軽く持ち上げた。
「殴ったぁー」
「誰を?」
「・・・・・・」
「誰を殴った!?」
ムキになって食らいつくアタシに、つまらなそうな顔をして背を向ける。
バフッ
部屋の奥、ベットにダイブをして無視を決め込むつもりらしい。
そのまま全く動かなくなった。
「はぁ・・・・」
勘弁して欲しい。
アタシはベットサイドに立って、俯せに寝転ぶ白井を見下ろした。
「く・・・」
「何が心配なの?」
口を開きかけた途端、白井が上半身をゆっくりと起こし、アタシを見据えた。