ようやくコールが鳴り止んだ頃。


アタシはすっかり目も覚めて、携帯を握り締めたままベランダの外に出た。


空気が冷たくて、真っ暗な闇が心地よくて、アタシはそっと目を瞑る。


一服しながら那智のことを想った。


「はぁ。」


バカみたいだ。


ブーッ・・・ブーッ・・・



「・・・・!!!」


まただ。


また鳴り出した携帯。


慌てて携帯を開く。


{着信中 非通知}


こんな時間に、一体・・・・




「・・・・はい。」

恐る恐る出した第一声は、相手の声でかき消された。


「もしもーし!覚えてるー?」

「・・・・・。」

忘れたくても無理な話だ。



梅林。
最悪なあの男、白井。



「あ?警戒してるー?」

「当たり前だ。」

あんなことがあってスグだ、そうそう仲良くなんかなれやしない。


「へーそっかぁ残念。俺、アンタに興味あんだけどねぇ~。仲良くしてよっ」


「・・・用件は?」

「ハハハッ!マジ気ぃ強いよねー?俺にそんな態度すんのアンタ位。」


いちいち腹が立つのは何でだ。


「いい加減にして!」

「じゃあいいやぁ。今度会いに行くね!じゃあね」

「・・・っ」


ツーッ・・・

ツーッ・・・



握り締めた携帯が、耳元でミシミシと音をたてた。