店内に響き渡る私の声。

一瞬静まり返る店内。

申し訳なさそうに周りの人に頭を下げる私。

「ゴメン、ゴメン。お肉の焼き具合に見とれちゃって」

と慌てて言い訳をする私。

「いや、網の上には野菜しかないし。大丈夫か?」

と笑う武。

自分を落ち着かせるためにウーロン茶を一気に飲み干す。

「堂島さんは何を悩んでるの?」

今まで笑っていた武の表情が変わった。

「実はアイツ…父親がいないんだ。子供の頃から母子家庭で育っている」

武が続ける。

「それがトラウマになってるみたいでな。これから家庭を築いていけるかどうかって悩み込んでしまったらしい」

「お父さんがいないんだ…。それで?」

「アイツの彼女は大丈夫と励まし続けてたんだけど、時間が経つにつれてアイツ自身がどんどん悪い方へ考えちゃったみたいで…結構マイナス思考な所があるからなぁ。アイツのあんな顔、俺は初めて見たよ。あれは相当追い込まれてるな…」

とため息をつきながら煙草に火をつける武。

「難しい問題だよね。過去を変えることは出来ないし…」

「そうだな。アイツが自分自身で立ち直る事が一番いいんだが。事情が事情だけに」


意外だった。