(まいっちゃうのはこっちだよ)と思いつつも武の話を聞く。

「この前ウチの会社に来た男覚えてるか?アイツ久々に訪ねて来たと思ったら何の話だったと思う?」

「仕事の話じゃなかったの?まさか愛の告白?」

と私はそっけなく言った。

「それがさ、突然来て何を言うかと思ったら『彼女の事なんだけど…』って。そんな事は電話でよくねぇ?」

「か、彼女?」

身体中に雷が落ちたかのような衝撃を受けた。

そりゃそうだよね。あんなカッコいい人に彼女がいない訳がない。

何でそんな事を最初に考えなかったんだ。私のバカバカ。

「そ…それで?その彼女がどうしたの?」

今にも裏返りそうな声で聞いてみた。

「いや、彼女に問題があるわけじゃないんだ。問題はアイツ。実はもうすぐ結婚するんだよ。」

「結婚?」

私は思わず大きい声を上げてしまった。

「そんな大声出して何?」

武はビックリした表情で言った。

そして、話は続く。

「ちなみに俺は友人代表のスピーチを頼まれてる。でもな最近になってどうも上手くいっていないみたいなんだ」

2度目の雷が落ちた。

気を抜いたら泣きそう。