私を蔑んで、バカにしている男らをこっちから逆に見下ろすためよ。


そのためなら、私はプライドも自尊心も捨てる。




「言っとくけど、あの女達を追い払ったのはあんたを助けるためじゃない」


「………」


「ていうか、俺そんなに優しくないし。あんたにちゃんと忠告しておきたくて」


「…忠告?」


「俺らには金輪際近付かないでね。皆女嫌いだし、特にあんたのような女が好かないんだよ」



‘ら’…?

複数形…?


だいたい貴方が誰かなんて知らないしわ。

さっきの女達のうちの一人が‘湊君’って言ってた気するけど…



そんなに有名な人なの?


私には関係ない、かな。

そんな凄い人なら尚更ね。


安心して?

言われなくても私が貴方‘達’に近付くことはないから。


自惚れは大概にしといてよ。





「そう…なら気を付けないとね?」



よりいっそう頬を緩めた私に、目を大きく見開いて湊と言う男は面食らっていた。



そうよね…

最初から私を助けた気はなかったのよね。


当たり前、か。

貴方の中ではとっくに私は穢れた身だものね。


貴方が今視界に映している私は若葉こころというごく普通の女、ではなく

噂の中で生きている私。




踵を返し、私は背を向けフッと自虐的な笑いが込み上げてくるのをなんとか抑えるようにして




この場をできるだけ早く立ち去りたく、足早に歩を進めた―――