男は黙ったままただ私の顔を見ている。

正確には、瞳を。

まるで何かを探るような目。


だけど、そんなの私には関係ない。

望んでいることといえば、他の男と同じことだから。



スッと男の顔に手を添えて、自分の顔を近付けた。

本当は、たまらなく嫌だし気持ち悪いけど


カモフラージュも必要だと思う。




私がこの男にキスをすれば、噂が本当だと証明出来る。

真実なんて脆いもの。



誰も私を知らなくていい。

私は一生自分を偽って生きていくと決めたから。



誰も好きになんてならないし、

誰にも私を本気で好きになんてならせない。


こんな尻軽女を演じ続ければますます皆私を軽いとしか思わない。



誰も私自身を見てくれなくなる。

そう、私はそれでいいんだ。





後、数ミリだった。




けど…――




パシッ




男の手が私の添えた手を振り払ったため、


私も動きを制止せざるをえなくなった。




「―――っ…」



叩かれた手が、熱を帯びジンとくる。




数歩後ろに下がり、男から距離をとると



そこにはさっきまで柔らかかった表情を一変させ冷たい視線で私を見る男。