だけど、そうじゃなかった。



「私、水城梨磨って言うの。お名前何て言うの?」



他の誰でもない私の目を見て、目の前の女の子がはにかんだ表情をして言ったんだ。



涙が出るかと思った。


彼女は私を『こころ』と呼ぶ。

家族以外で下の名前で呼ばれるのはなんだかくすぐったくて


でも嬉しくて



私はその日一日中梨磨との会話を思い出しながらなかなか眠りにつけなかった。



中学に上がる頃にはもう、


周囲の私を見る目がガラリと変わった。



男は私を女として見るようになった。

女は私を嫉妬を帯びた白い目で見るようになった。


数歩歩くたびに見ず知らずの人に引き留められてはケーバンやらアドレスやらしまいには何処に住んでいるか聞かれる始末。