「たにぐち…っ?」

「…好きだ」

「…っ」

「今だけ」

「ぇ…」


「今だけ…こうさせて」


すると、抱きしめる力が少し弱まった。


…ごめん、ごめんね。

こんなにも、

彼はあたしを想ってくれてるのに。



あたしは、その想いに応えられない。




しばらくすれば、玄関の開く音がした。

その音と共に、谷口はあたしから離れた。


「どうせ、飯田だろ。俺、寝室いるな」

「ぁ、うん…」


谷口は、少し悲しそうな笑みを見せて、寝室へと行ってしまった。