俺はそれを黙って見つめて、パラソルの下に座った。

「お疲れ様」

「…なにが?」


谷口の質問に、ぶらっきぼうに答える。


「お姫様の相手」


”お姫様”ってのは、ナツの事を言ってるんだろう。

あいかわらずムカつく言い方。


「別に、んなんじゃねぇよ」

「…それ、桃嘉ちゃんに言ってあんの?」

「あるに決まってんだろ。つーか、俺の前だけでわざと”桃嘉ちゃん”って言うのやめてくんない?」


谷口はククッとおもしろそうに笑う。

ムカつく。

こいつが桃嘉を好きだとか以前に、俺はコイツが嫌いだ。


ウザイくらいに、おっせかいだから。



「まぁ、安心しろって! とっくに吹っ切れてますから!」

「…」


安心なんてできるか。

そんなこと言われたら、余計心配だっつの。