それからというもの、
那智はわたしのことを
よくいじるようになっていった。
『おれ結婚なんか絶対やだ』
ある日の授業中、急にやつが言い始めた。
「なんでさ?わたしは早くしたいよ、結婚」
『だってやじゃん。他人と一緒に住むなんて。
洗面所に髪の毛とか落ちてたら最悪(笑)』
那智の家は、那智が小6のときに
離婚してお母さんが出ていき
お父さんと二つ上のお姉さんが残った。
それで中2のときに再婚した。
そのことを風の噂で知っていたわたしは
どんな反応をすればいいのか
わからずに言葉を返せずにいた。
『でもねー…』
『ゆずとなら結婚できる』
「っ」
『家帰ってソファーにふわって
おまえが座ってたらちょーいい。』
不覚にもそんなことをさらっと
言ってのける那智の顔は
いつもと変わらない同じ表情で…
わたしの心はざわざわして止まなかった。