幸一が小学5年生の12月、幸一に弟が出来た。

すごく歳が離れているけれど、弟が出来た喜びでいっぱいになった。

幸一に弟が出来てから、友達が弟を見るために遊びに来るようにもなり、幸せな毎日が始まったけれど、弟が生まれる前よりも暴力はエスカレートした…。

「お家の事情でね…引っ越すことになったの…。ごめんね…。」

それでも、たくさんの友達と一緒なら、こんな現実でも我慢出来ると思っていた…。

それなのに、残酷な現実を突きつけられ、幸一は初めて涙を流した。

「い、嫌だ…!!みんなと離れたくない!!ここにいたい!!」

今の環境が変わることだけは耐えられず、泣きじゃくっていた幸一の体は大きく前に飛ばされた。

「うるせぇ!!」

「な、何するのよ!!」

泣きじゃくっていた幸一の背中を父親が思いきり蹴り飛ばし、すぐに母親が幸一の元に駆け寄った。

そこから父親と口喧嘩が始まったが、口喧嘩がエスカレートして、父親が母親に暴力を振るい出した…。

初めて母親が暴力を振るわれているのを目の当たりにして、すぐに罪悪感が幸一の心を蝕んだ…。

自分が泣いたせいで、駄々をこねたせいで、母親が暴力を振るわれてしまっているのだと思い、幸一は痛みを堪えて笑顔を作った。

「僕、我慢するから!!」

もちろん、我慢なんてしたくないし、我慢なんて出来ない…。

ただ、喧嘩している光景も、母親が暴力を振るわれている光景を見続けている方が我慢出来なかった…。