幸一は父親も母親もいる家庭であり、経済的にも恵まれているように見える家庭で育ったが、本当は違う…。

「ねぇねぇ、お父さん！今日ね、試合で勝って、MVPになったんだ！！」

小さい頃からスポーツ万能で、近所の野球チームに入り、地区優勝してMVPを獲り、賞状までもらった。

もらった賞状片手に仕事から帰ってきた父親に駆け寄り、誇らしげに賞状を見せるけれど、父親は全く興味を示さず、相手にもしてもらえなかった…。

幸一の父親は、幸一の相手を一切しない父親だった。

どんなに話しかけても、言葉を交わしてくれることはない…。

しかし、幼い幸一はどうにか相手してほしくて、いつも色々と努力した。

小学校に進学し、学校のテストがあるたびに、父親に褒めてもらいたい一心で必死に勉強した。

「見て！今日漢字テストで100点取った！！」

「あら！すごいじゃない！！ねぇ、あなた！幸一が100点取ってきたわよ！」

その努力が実り、テストで100点を取った時、母親はすごく褒めてくれたけれど、父親は表情を変えることもなく、褒めてくれたことなんて1度もなかった…。