「も、もしかして、広海（ひろみ）！？」

横断歩道が青に変わり、歩き出そうとしていた彼女に焦って話しかけると、彼女は何が起こったのか分からないような顔をしながら幸一の顔をじっと見つめる。

そんな彼女を他所に、幸一は少し確信していた。

身長も少し高くなり、髪も茶色く伸びているけれど、顔は全然パッチリとした二重の瞳と、卵のような輪郭に薄い唇は全然変わっていない。

だから、小さい頃よく遊んでいた広海だと信じて疑わなかった。

「ま、まさか、こ、幸一君！？」

「そうだよ！超久しぶり！！」

幸一の顔を見ていた彼女の表情が徐々に明るくなり、昔と変わらない満面の笑みを見せる。

広海とは家が近所だったから、幼馴染みのような存在で、幸一や他の男友達に混ざってよく遊んでいた。

幸一に弟が出来た時も、毎日のように家に来て弟を見に来ていた1人だ。

「な、何してんの！？昔引っ越したじゃん！」

「就職した先が昔の家の近くでさ、今実家から通ってるんだ！広海は！？」

「私は今流行りのフリーターよ。」

広海の笑顔を見ているだけで、幸一の心に懐かしい風が吹く…。

小さい頃の話に始まり、引っ越してからのことや高校の頃のことを簡単に話していたら、30分以上の時間が経っていて、自分が仕事中だったことを思い出した。