すぐに病院に行って治療してもらい、下された診断は複雑骨折で、日常生活に支障はないが、ハードな動きを必要とするバスケをやろうとしても、思うように動けないという宣告だった…。

バスケが出来なくなり、生きる気力を失くしたが、母親にどうしても高校に行くようにとなだめられ、近所にある高校に行くことに決めた。

明るくて、スポーツも出来る上に、成績優秀というのが評判だったから、いつも女子が寄ってきていて、その中に栄がいた。

何となく過ごしている毎日の中で栄に告白されて、好みではあったから付き合うことにしただけで、本当は恋愛なんてどうでも良かった。

母親と2人の父親を見てきて、結婚なんて馬鹿馬鹿しいという気持ちがあって、興味もなかったから。

だから、ただの暇つぶしで栄と付き合い、女というものを知った。

栄と一緒にいることで、彼女という存在は良いものだと思い始めていたけれど、高校2年生の夏、そんな想いは続かなかった…。

「や、やめてよ~!!」

栄と遊んで家に帰ると、玄関先まで弟の鳴き声が聞こえてきた。

弟の泣き声がする方に向かって走っていくと、そこで惨劇を見た…。

父親が母親の頭を掴んでタンスに叩きつけ、母親は泣いて謝っていた…。

弟は父親の足にしがみつき、何とか止めようと必死になっているところを見た瞬間、幸一の中で何かが切れた…。

「てめぇ!!何やってんだよ!!」

中学生の頃、バスケのために鍛えていたから、もう昔のように父親に力で負けることはない。

そんな力を右手の拳に込めて、今までの恨みもぶつけるかのように、初めて父親を力一杯殴った。

その日から幸一の家族は一気に壊れていった…。