しばらく二人とも黙っていた。


(どうしよう…)




後悔とか、彼氏に対する罪悪感とかは不思議と全く感じなかった。


目の前に洸太がいる。



それだけでその時は幸せだと思った。




私は何も言わずに洸太の背中に抱きついた。


洸太も何も言わないまま、体を回して私を抱き締めた。




─ピリリリリリ─


突然、電話が鳴った。

時間はまだ昼の1時頃だった。


(こんな時間に誰?)


普段ならまだ寝ている時間だった。




携帯を開くと【愛美】って文字が出ていた。



(愛美?何かあったのかな?)



『…もしもし?』


『梨花さん?スイマセン…ッ…こんな時間に…ッ…まだ寝てましたよね…?』




『愛美?どうしたの?泣いてるの?』



明らかに元気のない声で、泣いてるのを我慢してるような話し方だった。



『圭輔が…ッ…帰って来ないんです…電話も…ッ…ずっと繋がらなくて…』



『えっ?今どこにいるの?・・・うん、・・・すぐ行くから待ってて!!』



愛美は家で寝ないで圭輔くんの帰りを待っていた。


圭輔くんの携帯は、充電が切れたのか、ずっと留守電になっていた。




『洸太、愛美んちまで送ってくれる?』



まだ数時間しか寝ていなかったけど、


愛美が心配ですぐに行く事にした。