『だから、愛美が今月いっぱいで辞めるんだよ』
『なんでですか?店長、そんな事、許したんですか?』
店長は溜め息を一つついて、
バーボンの入ったグラスを眺めていた。
『梨花、お前だから話すけどな…本当は愛美からは黙っててって言われてるんだけど…』
『はい…?』
『愛美、妊娠したんだよ…産むって言うんだから仕方ないだろ』
『えぇ?妊娠って…まさか…真田さんの子供ですか?』
『…おそらくな…だから反対したんだけど、産むの一点張りでさ』
(まさか…あの愛美が真田さんの子供を産むなんて考えられない…)
私は愛美から何にも聞いていなかった。
毎日、顔を合わすけれど
他愛のない会話しかしていなかった。