真冬の寒さがなくなって、
少し優しい風が吹いて二人を包んでいるようだった。
『ホラッ』
洸太が左手を差し出した。
私は黙って洸太の手を握った。
『なぁ、梨花』
『ん〜?』
『…あのさ、梨花…もっと俺に頼ってこいよ』
洸太は歩くのをやめて、私を真っ直ぐ見て言った。
『いきなり何?どうしたの?私、ちゃんと洸太に甘えてるよ?だから電話するんだよ』
私がそう言っても、
『お前はいつも強がってんだろ!俺の前でくらい弱音吐いたり愚痴こぼしたりすればいいだろ?』
洸太はそう言って私の体を引き寄せて、抱き締めてくれた。
私は洸太の気持ちが嬉しかった。
洸太の胸の温もりや鼓動が服の上からでも伝わってくる。
しばらく抱き締められながら、
『…ありがとう、洸太』
そう小さく呟いた。
洸太は照れたような顔をして、
また私の手を握ったまま前を見て歩き出した。
顔が見えないように少し前を歩く洸太の背中を見て、
幸せな気持ちになった。
(どうしよう…洸太の事、もっともっと好きになっちゃうよ…)
好きという気持ちが抑えられなくなるのが怖くなった。