『好きだから別れるんです…私は圭輔にふさわしくないし、圭輔を幸せに出来ない……私はあの人から逃げられない……』
愛美は泣かなかった。
諦めたような力のない目をしていた。
『圭輔、私の事…一回も抱いてくれなかったんです…笑っちゃいますよね…こんなにたくさん色んな男に抱かれて来たのに、一番好きな男に抱いてもらえないなんて…でも、逆にそれで良かったです』
『別れるなんておかしいよ!好きなら一緒にいればいいじゃん!圭輔くんだって話せばわかってくれるよ!愛美の事、本当に好きなら、愛してるならわかってくれる!抱かないのだって大事にされてる証拠だよ?』
愛美は『ありがとう』って小さな声で言った。
『もういいんです…圭輔に出会えて良かったです。今日帰って来ないでって言ったけど、電話してみます…梨花さんも今日はありがとうございます…私の話を聞いて泣いてくれる人がいるんですね……嬉しかったです』
愛美はフッと笑顔を見せた。
『私はうまく言えないけど、愛美は愛美だから…どんな人生歩んできてたって、愛美に出会えて良かったって私も思ってる。もちろん…圭輔くんだって…』
愛美は小さく首を横に振った。
(愛美の意志は固いか…)